~クトゥルフの呼び声TRPGシナリオ「密やかな小声」~ 最終更新:2019/11/10 1.はじめに このシナリオは「クトゥルフの呼び声TRPG」に対応したシナリオです。 推奨人数は1人です。 ※2人でも可能だが、途中で分断させて同時進行させる必要があるので注意 推奨職業はありません。推奨技能は<目星>です。<聞き耳><天文学>も使う箇所がありますが必須ではありません。 持ち物は身につけているもの以外はすべて没収されます。 !継続キャラ向けです。 !難易度は低く、キャラロストの危険はありません。息抜きセッションのつもりでどうぞ。 2.あらすじ あなたは調べ物をしに街の図書館へとやってきました。 しかし目的の本はなぜかなかなか見つかりません。 やきもきしながら図書館を彷徨うあなたは、不意に鈴のような音を耳にします。 あなたは本に囲まれた場所から脱出できるのでしょうか? ↓以下、スクロールで『目的』 3.目的 ・本に囲まれた世界から無事に脱出する ヴォルヴァドスという旧き神が黒幕ですが、友好的な神格のひとりです。 知識を求める探索者のために、ちょっとした試練を用意したようです。 4.構造と背景 ○現実世界 普通の図書館であり、客や司書などはまったく普通の人間です。 ただし探索者が望む本だけは、近い内容こそ見つかれど、これだ!というものは決して見つかりません。 存在していたとしても、黒幕であるヴォルヴァドスによって隠されています。 ○本に囲まれた世界 ヴォルヴァドスが試練のために飛ばした異世界です。 もしヴォルヴァドスによる移転を察知したうえで抵抗するなら、POW75との対抗になります。 壁はすべて積まれた本でできています。 積まれた本はすべて探索者には知覚できない文字で書かれています。 一本道であり、前か後ろに進むことしかできません。 5.NPC ○司書(名前は適当に) 図書館に司書として務める若い女性。 まだ不慣れであり、少々ドジ。 6.進行 ★図書館 探索者たちには調べ物のために、ごく普通の図書館へ向かってもらいます。 ※図書館は市立で、他の市民も日常的に利用しており、活気もある ※少々古く、検索機器は置かれていない 調べ物はなんでも良いが、具体性のない内容であればあるほど良いでしょう。 (たとえば死亡した友人を生き返らせる方法など、魔術に近い内容でも構わない) 探索者たちはどのような本を探せばいいのか分からない、あるいは探している本をどうしても見つけることができません。 司書を呼んで探しても構わないが、「あるかは分かりませんが……私も探してみますね!」と探しに行ってしまいます。 もちろん彼女が本を見つけることはできません。 適当なタイミングで(探索者たちが目的の本を見つけられなくて諦め始める頃)、イベントが発生します。 <どこからか、『ちりんちりん』と小さな鈴のような音が聞こえてきました。  すると、瞬きをした瞬間、あなたは見覚えのない場所に立たされていたのでした。> ★本に囲まれた世界 ※---大声によるペナルティ---※ この世界では、大声を出す毎にペナルティが起こります。 <声を張り上げた途端、なにかとてつもない力で口が閉じられました。  口はすぐに開けるようになりますが、不思議なことに、その喉は息を通せど言葉が出てくることはありません。  突然声を失ったことにより、0/1d2のSAN喪失です。> このイベントにより、該当する探索者は1d3分の間まったく声を出せなくなります。 二回目は再び声が出せなくなり、さらに<喉が焼け付くように痛みだします。> 突然の喉の痛みに0/1のSANを喪失します。 三回目以降は声が出せなくなる・喉が痛むのみですが、喉の痛みが強くなるため耐久を1減少します。 ※---------------------------※ ※------火を使った場合-------※ ライターなどを使う可能性もあるでしょう。 一瞬でも火をつけようとした場合、以下のイベントが起こります。 <火をつけようとした途端、火は一瞬にして燃え上がりあなたを包み込みます。  火はすぐに消え、不思議なことに火傷もしていませんが、  一瞬とはいえ、全身を焼かれる痛みと息苦しさを体感したことで1/1d4のSAN喪失です。> さらに、 <足元に『火気厳禁!』と文字が浮かび上がり、消えていきました。> なお、周りの本は無事です。 ※---------------------------※ <探索者たちはある通路に立っていました。  左右とすぐ背後は壁であり、それはすべて積まれた本でできた壁でした。  元の図書館とは異なる、異様な光景に0/1のSAN喪失です。> 辺りを見回したなら、後ろの本の壁へ<目星>できます。 チャンスは後ろの本の壁を見た一回のみです。 成功すれば、探索者にもわかる言語で一言書かれていることに気付きます。 <『図書館ではお静かに』と文字が浮かび上がり、消えていきました。> もし周りの壁の本をよく見たなら、 <壁となっている本はタイトルらしきものは書いてありますが、今までに見知ってきたどの言語とも一致しません。> これは探索者の知覚できない言語であるため、たとえ神話技能に成功しても読むことはできません。 ○さらに、もし神話技能を成功させたなら、 <本に書かれているのは、地球上には存在しない、遠く離れた世界の言語だと察しました。  しかしそう察した瞬間、その考えは一瞬で払拭されてしまいます。  そしてすぐに、「今その知識は要りませんよ」と秘密めいた小声が頭の中へ吹きこまれました。  脳へ直接響いた声に、0/1のSAN喪失です。> 払拭されるため、共有はできません。 なお、初期位置は後ろと左右に壁があるため、前に進むことしかできません。 しばらく進むと、赤と黒の螺旋階段に出くわします。 ★赤と黒の階段 <下へ下っていく螺旋階段です。  階段も本で組まれており、赤と黒の本がチェック模様のように交互に配置されています。> 目視すると、<ちりん、と鈴のような音がしました。> <秘密めいた小声が頭の中へ吹きこまれます。  「生は、愛と宝物を踏んだ先に。死は、幸福を踏んだ先に」> 小声を聞いたのが初めてであれば、<脳へ直接響いた声に0/1のSAN喪失です。> 階段に〈目星〉をすると、<本の左上と右下の隅に1~10の数字、またはいくつかのアルファベットが書かれている>のを見つけます。 ここでの正解は、【赤い本のみ踏んで降りていくこと】です。 赤い本だけ踏んで降りていくために、技能ロールは必要ありません。 ○不正解の時 <黒い本を踏んだ瞬間、その本はどろりと泥のように溶け、あなたを飲み込みます。  泥は否が応でも口から入り込み、火傷するほどの熱を伴って喉を通り過ぎました。  あなたは突然のことに、大きくえづいてしまいました。> したがって、大きい音を立てたことによるペナルティが強制的に課せられます。 <その喉は息を通せど酷い風邪をひいた時のように痛むのみで、言葉が出てくることはありません。  突然泥を飲み込み声を失ったことにより、1/1d2+1のSAN喪失です。> これにより、1d3+1分間声が出せなくなります。 もしアイデアか知識を要求されたなら、<知識>を振らせましょう。 成功すると以下のことを思い出します。 <トランプの模様はそれぞれハートが愛、ダイヤが宝、スペードが死、クラブが幸福を意味している> ※------分からない場合-------※ どうしても分からない場合、探索者に『今何を知りたいのか』を言わせてみましょう。 調べる対象が具体的に出ているのであれば、<幸運>に成功すれば望む本を出現させて構いません。 上記の知識で得られるものと同様の情報を知ることができます。 ※---------------------------※ 螺旋階段を降りると、トランプが落ちています。 ハートの1~8とスペードの9です。 ※なお、螺旋階段を降りたところで階段の本はすべて黒になっており、後戻りはできなくなります。 ★台座とランプの部屋 先に進むと、小さな台座が置かれた小部屋に着きます。 周りの本は様々な色があるものの、全体的に黒や紺碧のものが多いようです。 なお、ここは無視して先に進むこともできます。 部屋の先には通路があることも伝えましょう。 着いた時には同様に小声が聞こえてきます。 <秘密めいた小声が頭の中へ吹きこまれます。  「火を囲うものたち。輪を持つものをすべて選びなさい」> 部屋を見回せば <天井に大きな赤く丸いランプがあり、その周りに様々な色・大きさの球体が下げられています。  それらは赤いランプの周りを、円を描きながらゆっくり回っています。  球体の大きさは、円の外側のものほど大きめのものが多くなっています。> 部屋の<目星>に成功すると、以下のことに気付きます。 <黒くてとても小さな球体が、一番外側で、他とは違う角度で、ランプの周りを回っています。  なお、球体の大きさは以下の通りだと分かります。> (数字は赤いランプに近い順) 赤いランプ>5>6>7>8>3>2>4>1(>9) <アイデア>に成功すると、<これは太陽系を表しているのではないか、ということに気付きます。> その上で<天文学>か<知識/3>に成功すると、<太陽系の並びは水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星。そのうち、リングを持つものは木星、土星、天王星、海王星であることを思い出します。> ※------分からない場合-------※ 天文学などに失敗し、リングを持つものが分からない場合、探索者に『今何を知りたいのか』を言わせてみましょう。 たとえば『太陽系が載っている宇宙図鑑』など調べる対象が具体的に出ているのであれば、望む本を出現させて構いません。 宇宙図鑑を出現させたなら、天文学で得られるものと同様の情報を知ることができます。 ※---------------------------※ 正解は【5、6、7、8のトランプを台座に置く】ことです。 (水金地火木土天海冥のうち、木星・土星・天王星・海王星がリングを持っているため) ※冥王星だけスペードなのは、死の星であり、かつ惑星でなくなり(矮惑星)太陽系から外されたため 正解すると、【赤いランプ】が落ちてきます。 熱を持っていますが、手にしても火傷するほどではなく、落として割れることもありません。 ○不正解のとき 不正解でもなにもありません。ランプが取得できないのみです。 台座は無視して、先に進むことも可能です。 先に進むと、黒い本に囲まれた通路に入ります。 ★黒い本の通路 通路は周りがひたすら黒い本に囲まれており、一人分の幅しかありません。 前に進むか、台座とランプの部屋に戻ることしかできません。 ※PCが2人の場合、ここからゴールまでは分断(個別対応)となります <ふと、あなたのそばにいた人の気配がなくなりました。  手探りで探してみても、そこには誰もおらず、空を切るのみです。  視界のまったく効かない空間で、突然一人にされた恐怖から0/1のSAN喪失です。> ランプを持っていた場合、本来一つだけですが、分断後は二人の手に持たれているものとします。 ○ランプを持っている場合 赤いランプが光を放つため、通路の様子はすぐ分かります。 <密やかな声が耳に届きます。 「"それ"はなあに?」> この時点では何も起こらないため、先に進むことしかできないでしょう。 しばらく進んだところで、<聞き耳>に成功すると、 <背後から、あなたのものと被るように足音が聞こえてきます。  異世界で誰かにつけられているかもしれない恐怖から、0/1のSAN喪失です。> 失敗した場合、+10、+20とボーナスをつけて3回まで聞き耳が行えます。 成功するか、3回までの間に後ろへ歩いて行かないなら、そのまま先の行き止まりへ辿り着きます。 振り向く場合、【振り向き方】を聞きましょう。 身体ごと(ランプを持ったまま)振り向いた場合、そこには何もいません。 “首だけで”振り向いたり、ランプを前の床に置いてから振り向いたりすると、探索者の近親者の姿がそこにあります。 <振り向くと、あなたのよく見知った人物の姿がそこにありました。  そのひとはいつもの様子、表情で、ただあなたをじっと見つめています。> <目星>に成功すると、<悪意がないことが分かります。> ※---------影の動き----------※ 近親者の姿をしたなにかは何も喋りませんし、探索者に害を与えることもありません。 当然純粋な人間ではないので<心理学>はできません。 それどころか、戸惑う探索者にちょっとおかしそうに笑うくらいです。 なお、ランプを探索者と挟むようにすると、ふっと消えて探索者の背後に現れます。 つまりランプからの影になる場所に現れます。 ※---------------------------※ 正解は『影』です。 <答えると、そのひとは見知った様子でちいさく笑って、先を指し示しました。  最後にあなたの頭を撫でて、溶けるように消えていきました。> ※最後の行動はその近親者らしい仕草 ○ランプを持っていない場合 何も見えず、何もなく、ただひたすら通路を前に歩いていくのみです。 後ろへ歩けば、台座とランプの部屋に戻ることができます。 手探りで周りの様子は分かるでしょう。 ※光源がないため影が生まれない やがて、行き止まりに辿り着きます。 たどり着くと同時にイベントです。 ★ゴール(黒い本の部屋) <その時、黒い本が割れるように崩れ、『貌』が浮かび上がります。  それは完璧に非人間的なもので、人類とはおよそ異なるパターンで配置されていました。  ただ目だけがはっきりとしていて――星々の間の虚無のように黒く、この世のものならぬ叡智をたたえる冷然としたものでした。> <その眼のなかには小さくきらめく炎があり、その人間とはかけ離れた容貌のうえにもいくつかの炎がきらめいていました。  「こんにちは、知識を求める者」  その細く水晶のようにちりんちりんとした声が、あなたの脳内に届きます。  声の主の人間ならざる姿に0/1d4のSAN喪失です。> ○ランプを取得し、かつ通路の問に正解した場合 <鈴のような声が囁きます。 「あなたが知りたいことを言ってごらん。  あなたが知りたいことを望んでごらん。    答えはなくとも、助けとなるでしょう。」> <ちりん、ともう一度鈴の音が鳴ります。  次の瞬きの後、あなたは元の図書館で立ち尽くしていました。> ○「わたしはだあれ?」の問に答えず、影を連れてきていた場合 影は寂しそうな顔をして、消えています。 ★報酬 ○4回以上大声を上げなかった 1d10のSAN回復が与えられます。 ○ランプを取得し、かつ通路の問に正解した <あなたの腕には、一冊の本が抱えられていました。> ヴォルヴァドスにより探索者が求める本(あるいは非常に近い内容の本)を与えられます。 ※任意の一つの技能の成長値に+5の固定値ボーナスを与えます(技能成長に成功した場合のみ。失敗したら+1に変更)。 以上でシナリオクリアとなります。 7.裏話 Q.なぜ影が近親者の姿で現れた? 見知った姿のものに対しても冷静に対処できるかどうかを確かめているためです。 驚いて大声を上げたりしていたなら、ヴォルヴァドスの思う壺だったでしょう。 Q.謎解きのジャンルが統一されてなくない? 図書館なので知らないことは調べよう。 8.引用・参考 マレウス・モンストロルム P144『ヴォルヴァドス』 9.更新履歴 2015 公開 ... 2019/11/10 内容修正。主にリドル文の修正、〈目星〉周りの難易度緩和(目星無しでわかる情報を増やすなど)