バレンタイン思いつき兄さんひとりごと。
前回の思いつきが万人向けブラコンだったので今回は万人向けじゃないブラコン。

 チョコの星形宇宙をいくつもいくつも創り出し、その中でアラザンの星が生まれる。とある宇宙では金平糖の惑星と、また別の宇宙でホワイトチョコのミルキーウェイ。
 自分たちの存在する他に、また別の宇宙には同じ惑星があるかもしれない。いつかに聞いた、そんな多元宇宙論が好きだった。仮説の一つでは、泡にたとえられる泡宇宙がひとつひとつ生まれるそうなので、この場合は液体宇宙と呼ばれるのかもしれない。
 ――そんなことをつらつら考えはするものの、チョコをこんな形にしているのは、そればかりが理由ではなく、渡す相手が星好きだからに他ならなかった。星の話をする時に見せる幼い表情が好きで、こちらも興味を持ったと知った時の嬉しそうな顔が好きで、そうすると殊更張り切って話してくれるのが、好きで。であればこそ、流れ星をあしらった液体宇宙のひとつには、喜んでもらえたらいいな、という願いを込めた。
 星に願いを、というくらいだ。冷やして固めた星形の固形宇宙にそれぞれ願いを込めたなら、食われて腹に下って溶けて、そうして願いが彼に渡るだろうか。アラザンは小さくていくらでもあるので、そのひとつひとつに分けた方がもしかすると生き苦しくないだろうか。
 とはいえ、ひとつのアラザンは指先でつついただけであっさり揺れ動いて、そのまま指にくっついてしまった。簡単に壊れるくらいなら、いくつ壊れてもいいようにたくさん盛って身動きも取れないようにしてしまえばいいと、できもしないことを囁く自分がいる。
 それができるなら、却ってチョコを作るなんてことはしないよね、と黒い考えに苦笑して、液体宇宙らを冷蔵庫に入れる準備をする。これが宇宙を作る過程なら、今は泡宇宙の亜種ではなくビッグバン後のクォーク・スープの状態なのだろうか、とふと思う。しかしすぐに彼から『チョコをゆせんにかけたところで爆発でもさせたのか?』と言われるのが想像できて、チョコ爆発の現場まで想像してぷっと吹き出した。
 よくよく冷静になってみれば、願いだとかそんな大それたものではなく、ただ彼に喜んでもらえるようなチョコを作っているだけなのだ。そういえば、バレンタインとは(日本では)愛を伝える日じゃないか。何を小難しいことを考えていたのだろう、とばらばらのアラザンを見てひとり肩を竦める。
 それでも、結局、願いというものは気持ちにも他ならないので。星を集めて銀河を作るように、全部全部ひっくるめて、親愛も恋愛もそれ以上を込めて、彼に飲み下されますように。
 存在を「愛してる」と、双子星のある宇宙に込めた。

地味に愛が重い。