黒雲双子で『Marry me?』

 そう言うと、「……和訳を分かって言ってるか?」と問われた。
 失礼な、とちょっと思った。弟ほど頭はよくないけど、その程度の英語力はちゃんと持っているのに。
「そばにいてください、だよ?」
 そう笑顔で言ってやると、なぜか頬をつねられたのだった。

※意訳で同意で同義


黒雲智流で『最大級の口説き文句』

 好き、大好き、愛してる、は多分足りないよね。
 ええと、一緒にいて、そばにいて、も言ってるしね。
 同じくらい好きになってくれたら嬉しいな、とか。
 隣にいてくれて幸せです、とか。最大級って難しいよね。
 ……あれ、顔真っ赤でどうしたの?

※デレ殺す


白矢鳴で『本当、だったり。』

 今までそんな体験を? 嘘でしょう。
 聞く側なら俺だってそう思うけどな。
 散々怪物に襲われてきたとか、変な世界で女になってたとか。
 死んだ子が帰ってくるのを待ってるとか。
 まあ、でも、悪いことばかりでもなかったし。
「本当、だったり」
 だから、にやりと笑って言うくらいはできるのだ。

※やたらたくましくなったよね君(SAN的な意味で)


緑奈花木で『こっち見てよ』

 年甲斐もなく夢見たこともありました。
 でも、理科準備室を偶々覗いて、幼なじみとお弁当を黙々と食べていらっしゃるその表情(かお)を見て。
 ああ、私には無理だと。
 私には、恋しか繋がりがありませんでした。
 こっちを見てくださいと、言わなければ見てくれない他人なのでした。

※恋敵は双子の兄とかラスボスってレベルじゃない


診断ではないけど140字

『 今日飲み会なんだっけ?(´・ω・`) 』
『いや、行かずに帰る』(中点、オメガ……)
『いいの? じゃあ夕飯作っておくね(*´∀`*)』
『楽しみにしてる』(アスタリスク、アポストロフィ、ターンエー……?)

「なあ、メールのあの記号の羅列は何だ?」
「えっ?」

※メールとか疎そう


メイ飛鳥で『どうにかなってしまいそう』

 友人は多くなく、人と触れ合った回数よりPCを立ち上げた回数の方がよほど多い。
 だから別に平気なはずだ、そう思っていたのに。
(……思えば、飛鳥に触れたのは数回だけだった。足りなかったとでも言うのか、俺は)

※メイちゃんはむっつり


黒雲双子で『足して割って、ちょうど』

 俺は目が良いけど、武流は目が悪い。俺が気付かない音に、武流はよく気が付く。
 足して割ったらちょうど良くなるんだろうけど、補いあうのが心地いいから、このままが良いと思っている。
 足してそのままひとつになれればいいのにって、武流は思うみたいだけど、それは満たされて寂しいよ。

※近いようで真逆の箇所


黒雲双子で『唯一の、嫌い。』

 嫌いなところ、と聞いて。
「なかなか分かってくれないことがあるよ」
「理解できないことがある」

 だからはじめからひとつだったなら。
 違うよ、ばらばらだけど分かり合っていくのが良いんだよ。

「……ほら、理解できない」
「分かってくれないんだよね」
 お互い苦笑して、でも幸せなのだ。

※それって唯一以外は全部好きなのかお前ら


黒雲双子で『幸せになれなくてもいい』

 俺は幸せになれなくてもいい、兄さんの幸せが俺の幸せだから。

 (武流が幸せじゃないと幸せになんてなれないのに、どうか気付いて)

※正反対


黒雲双子で『三時の雨宿り』

 どこか行くの?
 いや、本屋に用事があったのを思い出したんだ。ちょっと行ってくる。
 そうなんだ。行ってらっしゃい。
 (昨日作ったお菓子があるんだけど、明日かな)
 ――あれ、早いね?
 雨が降ってきて面倒になった。
 なにそれ。じゃあお菓子でも食べようか。
 嬉しそうだな。
 気のせいだよ。

※一緒に食べたい


黒雲智流で『愛の逃避行』

 「これってドラマ?」
 「ああ、何となく観てた。駆け落ちした男女が車で追っ手から逃げているところらしい」
 「へえ……あ、速度制限越えてる。あ、ちょ、信号無視!」
 「(職業病か……)」


メイちゃん

 今日も仕事、の前にメールチェック。
 ……阿久津さんから? 変な添付付いてるし、また変なウイルスにでも引っ掛かったのかあの人。ごみ箱。
 後は……お、楓だ。帰ったら返すか。
 それと、……あ、飛鳥だ。ああ、俺からのメールは文字化けしなかったのか。
 ――やべぇ、遅刻する。

※阿久津さんのメールは不発弾


ふたご

 どこか知らない場所へ、行きたいなあ。旅行でもなくて、俺ですら知らない場所。もちろん、安全は前提として。
 「それに俺は付いていかせてもらえるんだろうな」
 聞こえてたんだ。それは、それももちろん、武流は大前提で。
 「うん。きっと、少しだけふたりぼっちになりたいんだ」

※ちょっとしんどかったらしい


黒雲双子で『先着順』

 早く、と急かす。分かってる、と苦笑混じりの声が返ってくる。
 こういう時だけは、武流の言う『ひとつになりたい』という気持ちが分かる。そう、身一つであれば、この焦りもなかったのに。

 「スーパーは逃げないぞ?」
 「100組までなんだよ、卵1パック1円のタイムセール!」

※1円は安い


アッシュで『誰にも渡さない』

 「H・T・Hをワープ実験に?」
 急な話だった。確かに彼女はクローンとしても優秀で…多少豪快すぎるものの…船長を務めるにその能力は十分だ。
 それに同行する船医を探しているという。そして、ワープ実験は前例がない。
 「なら、僕が」
 彼女が行くならば。この役目は誰にも渡さない。

※担当医だったとかもあるけどやっぱり死んだ姉さんをちょっと重ねてた説


アッシュで『それは寒い夜だった。』

 ふと夜中に目が覚めて、顔と背中が随分温かいことに気付いた。顔の方は黒いふわもこで、ゆっくり膨らみしぼみを繰り返している。見覚えのある猫だ、どうしてここに。
 では背中は、と振り返る。
 ……しばらく沈黙して、よくわからないままぽふっと頭を撫でたら、寝顔がへらっと崩れた。

※地味に夜這いかいダニエルくん


黒雲双子で『愛に近い執着』

 起きるなら君のとなりで、
 眠るなら君のとなりで、
 死ぬなら君と一緒に、
 殺されるなら君に。


『好きな子に無自覚天然タラシなように見せかけて本当は全部作戦で全力で口説き落とそうとしてる』アッシュのことを妄想してみてください

 押し倒して、告白して、すぐに後悔した。だからこそ動けなかった、なのに。
 「やっと、言ってくれましたか。待ってたのに……」
 言葉の意味と薄ら紅い微笑みが理解できないまま、細い腕が首に回される――

 (ぼぼぼ僕はなんて夢をぉぉぉ……っ!!)
 思わず頭を机に打ち付けた。

※夢オチた


黒雲智流で『最終手段』

 さて、耳が聞こえなくなってしまった武流は、目覚ましの音や声では起こせなくなってしまった。ぽふぽふ叩いてみても、普段は声との合わせ技なので効果は薄い。どうやって起こしたものかな……――
 「ん……っ!」
 「あ、おはよ」
 「……何をした?」
 「えっと……童話に倣ってみた」

※惑いの欠片後


休職した弟と

 帰宅の足が早まるのは、片割れを心配しているからばかりではない。ご飯があって、家が少し綺麗になっていて、いつでも「おかえり」がある。
 「最近は随分早く帰ってくるな」
 「俺が外に出られなかった時期の武流と一緒だよ」
 「なるほど」

※不定でも悪いことばかりでもない


黒雲双子で『だいたいそんなかんじ』

 「今日の朝ごはんは冷製スープです」
 「ああ、暑い日にはいいよな」
 「サラダもあるから、余ったらお昼にも食べてね」
 「分かった、スープと一緒に冷蔵庫に入れておく」
 「……聞こえてないのによく分かるね?」
 「何となく言いたいことは分かるからな」
 「読『心』術みたいだよ」

※何年一緒にいると


あなたは『「笑ってるあなたが好き」といった後に「だから無理して笑ったりしないで」って笑う』黒雲智流のことを妄想してみてください。

 あの時のことを謝ると、君はいつもあどけなく笑って、気にしないでという。でも、置いて行かれた悲しみは、きっと君でもゼロではなかったはず。すべて笑顔に変えられる君はとても強いし、その笑顔はとても好き。
 だからこそ、無理して笑わないでと微笑んで、やわらかな銀をなでた。

※アーシェちゃんへ


黒雲智流で『神様なんていない』

 彼女が耐えている。あらゆる大地を踏み締めたのだろう、これからも踏みしめていくはずの長い脚で。言うことをきかないはずの脚を縫い付けて、最後まで抗おうとしている。
 助けなくては、その脚を自由にしてやらなければ。そう思うのに、想いながら。俺の脚は、彼女を見捨てて出口へ駆けた。

※鍵部屋


白矢鳴で『縁のない話』

 俺はこいつを警察に突き出すことはあるんだろうか。たわいのない話の切れ間にふと思う。
 突き出したらどうなるのだろう。この先被害者がいなくなる、取材を受けるかもしれない、報酬があるかもしれない。
 考えてみて、ねぇな、と呟いた。そんなものより、本人と遊んでいる方が楽しいので。

※他人より身内。犯罪者の悪友に対して


白矢鳴で『君の最期に』

 同じ高校の出身であったこと、看取った馴染みであったことで、葬式に居合わすことができた。だから、俺が見た最後の姿は骨壺だった。
 そんな彼女とメールのやり取りをしていると言えば、オカルトか妄想だと思うだろう。でも、帰ってくると約束したのだ。
 だから、まだ、『最期』じゃない。

※ちょっとずれた


黒雲智流で『とっちゃ、やだ。』

 朝の、いつもの時間よりも少しだけ早く目が覚めて、そのせいかずいぶんと思考が不明瞭だった。
 何か夢を見たような気がする、でも思い出せない。
 わずかな引っ掛かりを諦めれば、いつもそばにある顔がある。その、平和な寝顔を眺めて――もう少しだけ近付いて、手を握って、目を閉じた。

※そんな感じの夢を見た