~クトゥルフ神話TRPGシナリオ「黒の祭祀」~ 1.はじめに このシナリオは「クトゥルフの呼び声TRPG」に対応したシナリオです。 クローズドシナリオ・持ち物没収系であり、推奨人数は2~4人となっています。 推奨職業はありません。推奨技能は<目星><回避>です。 それ以外では<アイデア>を使う機会が多いので、難易度を上げるなら、別の技能に変えても良いでしょう。 2.あらすじ ある日外を歩いていた探索者は、頭を殴られたような頭痛に襲われ、そのまま昏倒します。 目覚めた場所は扉のある部屋の中であり、そして一匹の白兎が探索者たちを見下ろしていました。 兎は探索者たちに頼み事をします。「僕の懐中時計を探してください」と。 探索者たちは懐中時計を見つけ、部屋から脱出することができるのでしょうか。 ↓以下、スクロールで『目的』 3.目的 シナリオの目的は二つあります。 ・懐中時計を見つけること ・正しく神判(神明裁判)を行い、無事に部屋から脱出すること “無事に”脱出するための手段に懐中時計も含まれています。 夢オチであるためロストの危険はありませんが、ハッピーエンドとなるかは行動次第でしょう。 4.構造と背景 最初に探索者たちが目覚める部屋には、血と肉片に濡れた台座と、白・緑・青の扉があります。 黒い扉もあるのですが、すべての部屋を周るまで出現しません。白い扉は後に赤い扉へ変化します。 このシナリオでの黒幕はニョグタです。 探索者たちを襲い、ニョグタが神として祀られる夢世界へ誘ったのはニョグタの専属である魔術師(グール)です。 ニョグタを楽しませ、精神力を捧げるためだけに探索者を呼び込みました。 5.NPC ニョグタ以外のNPCは、今回の夢世界のためだけに生み出された存在です。 したがって、過去の被害者の存在などは知り得ません。 夢世界に関する情報については、KPの裁量で変化させてください。 ●鳥 黄色の鳥。すでに殺されており、その血と肉片で白い台座を赤く濡らしています。 ●兎(白) 白い兎。目覚めた部屋で探索者たちが出会うNPCです。 白い兎はとても正直者でかつ、平和的な性格から探索者たちに協力的です。 ただし、赤い兎の存在により関わる時間は短いでしょう。 ●兎(赤) 赤い兎。白い兎のもう一つの人格であり、赤く染まることで変わります。 非常に暴力的な性格で、殺しを楽しむような性格ですらあります。 ●カメレオン 緑色のカメレオン。しかしその体色は自由に変化させることができます。 緑色の時は、根っからの嘘つきで、真実とは逆のことしか話しません。 他の色の場合は、その色の性質に準拠します(赤色なら暴力者となる)。 ●ペンギン 青いペンギン。探索者たちと話す機会はほとんどありません。 非常に臆病な性格で、探索者たちを見つけようものならすぐに逃げ出してしまうでしょう。 ●黒いもの(ニョグタ) 夢世界において神判官として君臨しています。 その神判で裁くのは罪人ではなく、ニョグタが好まないものでしかありません。 このシナリオではきっぱりはっきりした性格のようで、優柔不断な者が大嫌いです。 6.進行 ●はじめの部屋 最初に探索者たちが目覚める部屋です。薄暗いですが、目星に困るほどの暗さではありません。 <周りを見れば四つの扉があり、見上げれば雲に覆われた灰色の曇空が広がっています。> <すぐに、何者かが探索者たちに話しかけてきます。それは人間と同じサイズで直立していながら、どう見ても白い兎でした。> 「おはようございます。突然ですが、僕の懐中時計を探してくれませんか?」 <部屋の中でありながら空に覆われており、兎が話しかけてくるという非現実感に、探索者たちは0/1のSANチェックです。> 唐突な申し出に探索者たちは戸惑うでしょうが、白兎は申し訳無さそうにするのみです。 ・ここはどこなのか? →「審判所と、その控室です。でもなんでいたのかは僕にはよく分かりません、僕は最初からここにいただけなので」 ・各扉の中を教えて →「白い扉が僕の部屋で、緑の扉と青の扉にもそれぞれ緑色のひとと青色のひとがいます」 ・審判? →「さあ、とりあえず審判に出ろと言われて、内容も知らされてないので……ただ、審判官は非常にこわいひとです。きっぱりはっきりしたひとで、優柔不断なひとが大嫌いだそうです」 ・懐中時計? →「大事なものです。それがないと審判の時間も分かりません」 基本的には「よく分かりません」で通します。今回の舞台のためだけに生み出されたので、余分な情報は持ちあわせていません。 兎にあまりにも聞き込もうとする場合、血塗れた台座に気付かせましょう。 ※部屋への<目星>で気付いてもいいです <ふと白兎が鼻をひくつかせ、顔をしかめた途端、鉄臭いにおいが漂ってきました。ふと雲の影になっていた箇所が僅かに晴れ、真っ赤な台座が姿を現します。> <目星>に成功すると、<鉄臭い匂いは台座を濡らすものから漂っており、さらにその中にさながらいちごの身のような欠片が混ざっていることが分かります。> 目星に成功した者、共有された者は<アイデア>を振ります。 成功した場合、<真っ赤に濡れた柔らかそうなその欠片が、何かの肉片ではないかと考えてしまったことにより1/1d3のSANチェックです> <医学>を振った場合、<台座を濡らすのは血であり、欠片は肉片であることを確認します。ただし、それが人間のものでないことも確かです。> こちらは1/1d3+1のSANチェックとなります。 さらに、<台座の近くに潰れた黄色い花が咲いていることに気付きます。> 台座と花に気づいたなら、現状この部屋には何もないので扉へ向かわせましょう。 なお、どの扉も色が変わるのみで何の変哲もなく、すべての部屋が無音なので目星・聞き耳は無意味です。 ●白い部屋 まるで病室のように真っ白な部屋です。 白い暖炉がありますが、火はついておらず、白い灰と火かき棒しかありません。 しばらく経つと白兎が入ってきて、以下のイベントが起こります。 <不意に、雨が降り始めました。その雨は赤く、部屋は血の臭いで埋まります。  天井を見上げれば、既に赤黒く染まっています。この雨に居合わせた探索者は0/1d3のSAN喪失となります。> 部屋と探索者と白兎を真っ赤に染める頃、雨は降り止み、同時に暖炉で真っ赤な火が燃え上がります。 ※※※ この雨が降っている間、外から<扉を見ると徐々に赤く染まっていくのが分かります。> 中に探索者がいることを知っている者で、赤く染まりゆく扉を見たならば、仲間になにかあったのではないかという不安に0/1のSANチェックです。 赤い扉は外から開けることはできず、いくら叩いても中に音は届きません。 ↓ ●赤い部屋 真っ白だった部屋は、まるで炎の中のように真っ赤な部屋となりました。非常に暑く、汗が吹き出します。 血の臭いはしばらく経てば気にならない程度まで薄れています。 暖炉がこうこうと灯り、赤く熱を持った火かき棒が見つかります。 ※火かき棒:ダメージ1d4+db 耐久力20 その瞬間、<探索者たちの背後からケタケタケタと笑い声が聞こえてきました>。 この時、すぐに振り向くかを尋ねましょう。 すぐに振り向くなら、自動的に回避が成功します。 振り向かないか、遅れるようなら腕の一部をえぐられるような痛みが走り、1d3のダメージを強制的に負わせることになります。 笑い声の主は赤く染まった元・白兎です。赤兎は笑いながら突然探索者の一人に噛み付き(齧り)かかってきたのです。 これは暴力者な赤兎のフリであって、実際に戦うまでにはなりません。 さらに赤兎はDEXが非常に高いため、攻撃はそうそう当てられないでしょう。 「起こしてくれてアリガトウゴザイマス。けけけけ、久しぶりの外ダ!!」と叫び、扉から出て行ってしまいます。 慌てて追いかけても姿を見つけることはできず、完全に見失います。 ●緑の部屋 まるで森の中のようにすべてが真緑の部屋です。ところどころが蔦に塗れ、コケが生えています。 メモ:ファンブったら食虫植物に襲われることによるSAN-1 or 耐久-1 部屋への<目星>に成功すれば、<天井に生えているキノコを見つけることができます。> 天井のキノコはSIZ22で取得できます。 ただし手で取ろうとした場合、取ろうとした探索者は<見えない糸が手に絡みついたような感覚を得ます>。 キノコは真っ白であり、触っても問題ありません。 ただし食べるならPOT25との対抗となります(つまり即死)。 手にとって見れば、微妙に粉っぽいことが分かります。 更に部屋には蔦に塗れた本棚があり、<目星>に成功すると以下の内容が書かれたメモが手に入ります。 『<火起請とは>  神明裁判の一種で、赤く焼けた鉄(鉄片・鉄棒)を素手に受けさせ、歩いて神棚の上まで持ち運ぶ行為の成否をもって正邪を判断した。  もし、成功しなかった場合は罰として引廻・斬首などになり、極端な場合には五体引き裂かれた例もあった。』 更に<オカルト><知識/2>に成功すると、以下の情報が得られます。 『<神明裁判とは>  神明裁判(しんめいさいばん)とは、何らかの手段を用いて神意を得ることにより、物事の真偽、正邪を判断する裁判方法である。  世界の各地で類似の行為が行われているが、その正確な性質は各々の神、宗教によって異なる。』 『神明裁判に対し、魔女裁判の理不尽さを連想します』 部屋の中で<聞き耳>に成功すると、以下の情報が得られます。 『<ふと、どこからか歌が聞こえてきます。音の主を探すと、それは白い花でした。> “白いものは正直者。赤いものは暴力者。緑のものは嘘つき。青いものは臆病者。そして黒いものは優柔不断が大嫌い、迷うやつはひきずりこまれるぞ、四肢もがれるぞ”』 *** 緑の部屋を出ようとしたところでイベントが起こります。 ここで、探索者が見えない糸に絡みつかれていた場合、その探索者は釣り上げられ自由な身動きが取れなくなります。 <蔦に塗れた奥から、がさがさと音を立てて毛むくじゃらの足が覗きます。  一際大きく音を立てたと思うと、姿を見せたのは灰色の大蜘蛛でした。  この大蜘蛛を目視した場合、1/1d6のSANチェックです。 大蜘蛛はNPCではなくモンスターであるためすぐに戦闘となるが、絡みつかれた探索者は戦闘に参加できません。 さらに、大蜘蛛から一方的に攻撃されてしまいます。 ただし、<回避>の半分の値に成功すれば攻撃を避けることができます。 この糸を外させるには、大蜘蛛の耐久を0にするか、火かき棒で糸を攻撃するかになります。 火かき棒で糸のあたりを攻撃する場合、糸は目視できないため、<杖>に成功したうえで当たるかどうかに<幸運>を成功させる必要があります。 この大蜘蛛は火かき棒で殴れば一回で退散させられるが、火かき棒は白くなって熱を失ってしまいます。 もし熱を戻したいのなら、<アイデア>に成功すれば<赤い部屋で血に濡れて暖炉に火がついていたことから、探索者の血で濡らせば熱を戻せる>ことが分かります。 大蜘蛛の耐久を0にするか、火かき棒で退散させると腹の中から子蜘蛛が現れます。 子蜘蛛の数は1d10+5で決定されます。 <目星>に成功すると、更に中型の子蜘蛛が一匹おり、<アイデア>に成功すればそれが子蜘蛛たちを統率している蜘蛛だと分かります。 ***取りこぼした情報がある場合の救済措置 部屋から探索者たちが出てきたところで、ふと最初の部屋に顔が浮かんでくるのを見つけられます。 <生物学>に成功すれば<それはカメレオンの顔>だと分かります。 カメレオンはやがて降りてきて、緑色に戻ります。 彼とは話すことができるが、何度か(3回が無難?)話すうちに飽きてどこかへ逃げてしまいます。 そして、<彼の話す内容はすべて真実とは真逆のこと>です。少し話してから、<アイデア>を振らせると良いでしょう。 なお、カメレオンがどこまで知っているのかは進行具合などで調節可能です。 ●青い部屋 まるで海の中のように、すべてが真っ青な部屋です。 ところどころに海藻が生え、水の中でもないのにゆらゆら揺れています。 ※この部屋のみ、入ると宣言した探索者全員が入った途端に扉が強制的に閉められます。 物を挟んだ場合は強制破壊され、探索者が抑えていた場合は扉に挟まれて耐久力が-1されます。※ 部屋の中は息苦しさがあり、水の中のように寒く、酸欠と手足のかじかみにより、頭か手を使う技能には-20のペナルティがつきます。 ただし、熱を持った火かき棒を持っている者は手を使う技能のペナルティは免除されます。 <突然扉がバタン!と音を立てて閉まりました。扉は叩いてもうんともすんとも言いません。  息苦しい部屋に閉じ込められた事実に、溺死に近い恐怖を感じて0/1d3のSAN喪失となります> 部屋を見回せば、わかめの中から白い貝が見つかります。 近づくと、白い貝は探索者へ話しかけてきます。 「キノコと人間が似ているのはなぜ?」 ※答えは『どちらもほうし(胞子と奉仕)が出せるから』。※ 正解すれば貝は満足し、鮮やかな肉色に収められた金色の懐中時計を渡してくれます。 しかし、この回答回数(目星で貝に気付いてくれた探索者数)には制限があり、間違えるたびに貝は機嫌を損ねて大量の水を吐き出します。 回数を重ねれば水は部屋を埋め、そのうち部屋は完全に浸水してしまうでしょう。 回答を放棄して逃げる場合は、火かき棒かSTR対抗で扉か貝を叩き壊すこともできます。 ただし、貝の中の懐中時計は壊れてしまいます。 詰まるようであれば、<オカルト>か<知識/2>を振らせましょう。 成功すれば、<『大からすが机に似ているのはなぜだ?』という問いに対し、「わたりがらすもつくえも、すこしはノート(鳴き声と覚書の意味)が出せる」という答えがある>ことを思い出せます。 キノコについて何も見ていないなら、粉っぽいことを教えても良いでしょう。 ※※※浸水した場合 部屋がすっかり水で浸水してしまった頃、どこからか青いペンギンが姿を現します。 ペンギンは探索者を見つけると非常に怯えた様子で逃げ出してしまいます。 このペンギンの後を<追跡>することができます。 怯えすぎてうまく泳げない状態であるため、人間でも十分追いつける速度しか出せないのです。 ただし、カナヅチなら自動失敗でしょう。 <追跡>か<DEX×5>に成功し、3ターンの間息が続けば最初の部屋に戻ってくることができます。 ※窒息ロール 1d100をロールし、CON×8以下を出さなければならない。 しかしペンギンはどこかへ逃げ出してしまったのか、姿を見せることはありません。 その後青い部屋には一切入れなくなり、懐中時計の取得も不可能となります。 さらに、<あやうく溺死しかけた事実から生命の危機を強く覚えたことにより1/1d3+1のSANチェックです。> ここで火かき棒が濡れてしまった場合は、CON1d3+1分の血で染めれば再び熱を持たせることができます。 ○懐中時計を取得した後 ※場所はどこでも問題ありません。 懐中時計を調べると、どの言語でもない言葉で何かが書かれていることが分かります。 ※この言葉こそニョグタを退散させる呪文です。探索者は当然読めないので、兎に読ませることになります※ <懐中時計が突然音を立て、針が反時計回りにぐるぐると回りだしたと思うと、カチリと止まりました。  途端に探索者達の視界が白く染まり、やがて晴れた頃、視界に入ってきたのは白い台座にとまる黄色い鳥でした。  すると、懐中時計の針が時計回りに動き始めます。鳥の元に歩み寄ったのは、赤い兎と緑のカメレオンと青いペンギンでした。  もう一度針が動きます。そこにいたのは、それぞれ鉄棒を持った赤い兎、赤いカメレオン、青いペンギン、そして赤く染まった台座がありました。  懐中時計がカチリと音を立てた時、探索者たちははっと我に返ります。血塗られた一瞬の走馬灯に、見た者は1/1d3のSANチェックです。> イベントが終わった後、気付けたかどうかの<幸運>を振れます。 成功すると、<兎とカメレオンは嬉々とした表情だったものの、ペンギンは迷うそぶりを見せていた>ことに気付けます。 ***すべての部屋をまわった すべての部屋をまわれば、<はじめの部屋の血塗れた台座の後ろに黒い扉が現れます。> 黒い扉の先へ向かうことができるようになります。 ●黒い部屋 ※正解は【兎に懐中時計を返し、ペンギンに赤い火かき棒を持たせてる】ことです。※ <黒い扉の先は、闇の中のように黒い部屋です。  しかし薄明かりはあり、近くであれば視界も効きます。  入ってきた扉はあったはずの場所にはなく、元の部屋に戻ることもできません。  ふと気付けば、そこにはいなくなっていた兎・カメレオン・ペンギンが揃っています。  しかし彼らに話しかけてもうんともすんとも言いません。ただ立っているのみです。> ※この時点で火かき棒がなかった場合は以下のEDとなります。 ------------------------------------------------------- ED.4『赤い視界』 <突然、探索者の一人の足が、縫い付けられたように動かなくなりました。  見れば、小さな黒い指が這い出、探索者の足を掴んでいるではありませんか。  すぐさま黒い指は他の探索者にもまとわり付き、同時に強い悪臭が部屋を埋め始めます。  そして、うんともすんとも言わなかったNPCたちが、いつの間にか火かき棒を手に探索者の前に立っていました。> <振り上げられた火かき棒は、なんの抵抗もなく、動けないままの探索者たちの頭をかち割りました。  絶命する寸前、探索者たちが見たものは、動物たちにまとわりつく黒っぽい玉虫色のゼラチン状の塊でした。> ※強制的に1d20のSAN喪失となります →夢世界での全滅処理へ ------------------------------------------------------- ※この先は取得状況によってEDが変わります。 懐中時計を兎に返すならこのタイミングのみになります。 <懐中時計を兎の手に持たせると、赤かった兎は色を落とし、白く戻っていきました。> 持たせる者を間違えた→ED.3『ニョグタ』  赤くない→ED.3『ニョグタ』へ 火かき棒が  赤い→懐中時計を返していない→ED.2  いる→SAN喪失量が探索者の人数r1d15以下→ED.1-1                    →SAN喪失量が探索者の人数r1d15*以上→ED.1-2 懐中時計の有無→ニョグタとの戦闘を回避できるか否か 火かき棒を持っているなら、ここで三匹のうちの誰かに持たせましょう。 <持たせられた者は、ふらふらと虚ろな様子でどこかへ歩き始めます。  彼が歩けば歩くほど、しつこくまとわりつくような悪臭が部屋の中に充満し始めました。  むせ返るような麝香のような匂いは、吐き気を催させるほどです。  自分たちが近づいているのか? いいえ、匂いの主が、黒いものが近付いてきているのです。> 火かき棒を持たせることもなく、何をすれば良いのか分からず棒立ちしているのなら、<アイデア>を振らせましょう。 ただし、<どこからか悪臭が漂いはじめ、言い知れぬ重圧と吐き気に0/1d3のSAN喪失となります。> ***持たせる者を間違えた場合 ------------------------------------------------------- ED.3『ニョグタ』 <不意に、しつこくまとわりつくような悪臭が、一気に部屋の中に充満しました。  むせ返るような麝香のような匂いが探索者たちの肺を埋めて、呼吸すらままなりません。  そして、探索者たちの背後から<<ぐちゃり>>と大きな水音が鳴ります。  振り向くと、そこでは四肢をもがれた(NPCたち)の体が転がっていました。  果たして彼らは絶命したのか。探索者たちが判断する暇などありません。  暗闇から黒い小さな指が這い出、黒っぽい玉虫色の体を波打つようにして、ありえべかざる神判官が現れたのです。  それは、どこか爬虫類にも見える、液体とも個体とも言えない恐ろしいゼラチン状の塊でした。> <塊が探索者たちに覆いかぶさり、その触肢で四肢を掴みます。  力づくで四肢をもがれる激痛に、もはや声にならない叫びを上げながら、そこで探索者たちの意識は失われました。> ※強制的に1d20のSAN喪失となります →夢世界での全滅処理へ ------------------------------------------------------- ※さらに火かき棒の色により分岐します **火かき棒が赤くなっていない場合 <持たせられた者は、ひたすらに歩いて行ってやがて見えなくなりました。  しかし匂いはひたすら強くなり、ぐじゅる、ぐじゅるという液体のような音すら聞こえてきます。  少し遠いところで、「ぐぎゃ、」と鳴き声が上がったと思うと、ずるりと何かを引きずり込んだような音が聞こえました。> →ED.3『ニョグタ』へ(文言変更に注意) **火かき棒が赤くなっている場合 <持たせられた者は、ひたすらに歩いて行ってやがて棒を取り落としました。  しかし匂いはひたすら強くなり、ぐじゅる、ぐじゅるという液体のような音すら聞こえてきます。  彼は「ぐぎゃ、」と鳴き声を上げたかと思うと、その体は黒い部屋でも分かるほど赤く濡れ、ずるりと闇へ引きずり込まれていきました。> <探索者たちが呆然としていると、暗闇から黒い小さな指が這い出てきました。  それは、水らしき音を立てていながら、液体とも個体とも言えない恐ろしいゼラチン状の塊でした。> ●火かき棒が赤く、懐中時計を兎に返していない場合 ------------------------------------------------------- ED.2『黒いもの』 <探索者たちが呆然としていると、暗闇から黒い小さな指が這い出させ、黒っぽい玉虫色の体を波打つようにして現れました。  それは、水らしき音を立てていながら、液体とも個体とも言えない恐ろしいゼラチン状の塊でした。  ありえべかざる神判官の姿に、探索者は1d6/1d20のSAN喪失です。> <黒いものの触肢が伸ばされ、その体が探索者たちを覆い、やがて探索者たちの視界は真っ黒に染まっていきました。> <次の瞬間、探索者たちはまた別の部屋で目を覚まします。少々の眠気は覚えているものの、SAN以外の耐久などはすべて元に戻っています。  しかし、帰還を喜ぶ暇はありません。すぐにむせ返るような血の匂いに気付くでしょう。  周囲を見れば、血の海の中にばらばらになった兎などの動物の頭部や四肢などが見受けられ、それが匂いの元だと悟らざるを得ません。  凄惨な光景に、探索者たちは1d3/1d6+1のSANを喪失します。  さらに、すぐに彼らの前には黒いフードを深く被った男が現れ、表情は伺えないものの、満足したような様子であることが分かります。  「我ガ主ハ満足サレタ」  そう呟くと、男は部屋を出ていきました。> 生還しますが、報酬は以下の二つのみになります。 ○貝のなぞなぞに正解した:1d6のSAN回復 ○グールを倒した:1d4のSAN回復 ------------------------------------------------------- ○火かき棒が赤く、懐中時計を兎に返していた場合 <持たせられた者は、ふらふらと虚ろな様子でどこかへ歩き始めます。  彼が歩けば歩くほど、しつこくまとわりつくような悪臭が部屋の中に充満し始めました。  むせ返るような麝香のような匂いは、吐き気を催させるほどです。  自分たちが近づいているのか? いいえ、匂いの主が、黒いものが近付いてきているのです。> <ペンギンは、ひたすらに歩いて行ってやがて棒を取り落としました。  しかし匂いはひたすら強くなり、ぐじゅる、ぐじゅるという液体のような音すら聞こえてきます。  ペンギンは「ぐぎゃ、」と鳴き声を上げたかと思うと、その体は黒い部屋でも分かるほど赤く濡れ、ずるりと闇へ引きずり込まれていきました。> <探索者たちが呆然としていると、暗闇から黒い小さな指が這い出てきました。  それは、水らしき音を立てていながら、液体とも個体とも言えない恐ろしいゼラチン状の塊でした。> <黒いものの触肢があわや探索者へと伸ばされるその瞬間、時が止まったようにすべてが動きを止め、探索者たちの視界が真っ白に染まっていきました。> ここで<聞き耳>に成功すると、<や な かでぃしゅとぅ にるぐうれ すてるふすな>と何かを唱えるような声を聞くことができます。 さらに以下に分岐します。 ------------------------------------------------------- ED.1-1 探索者達の喪失SANの総計が『(探索者の人数)r1d15以下』である場合 <次の瞬間、探索者たちはまた別の部屋で目を覚まします。少々の眠気は覚えているものの、SAN以外の耐久などはすべて元に戻っています。  しかし、帰還を喜ぶ暇はありません。  すぐに彼らの前には黒いフードを深く被った男が現れ、表情は伺えないものの、不満そうな様子であることが分かります。>  「タリナイ、タリナイ、心ガタリナイ」 <ぶつぶつと呟いたと思うと、男は不意にフードを取り去りました。> ニョグタに従属するグールとの戦闘になります。人数は探索者-2人(最低1)です。勝てば生還し、報酬を受取ることができます。 ※SANもあまり削れず物足りなかっただろう場合のボーナス戦闘です。あっさり勝たせてもいいし、あえてきつくしても良いでしょう。 ※<幸運>成功でPLの望む持ち物を一つだけ取り戻させてもOK。 ------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------- ED.1-2 探索者達の喪失SANの総計がそれ以上である場合 <次の瞬間、探索者たちはまた別の部屋で目を覚まします。少々の眠気は覚えているものの、SAN以外の耐久などはすべて元に戻っています。  彼らの前には黒いフードを深く被った男がおり、表情は伺えないものの、満足したような様子であることが分かります。  「我ガ主ハ満足サレタ」  そう呟くと、男は部屋を出ていきました。> 探索者たちは生還し、報酬を受け取ることができます。 ------------------------------------------------------- ***報酬 ○正しく神判を行い、探索者が全員生還した:1d10のSAN回復 ○懐中時計を兎に返した:1d6のSAN回復 ○貝のなぞなぞに規定回数以内に正解した:1d6のSAN回復 ○(おまけ)グールを倒した:1d4のSAN回復 *** 7.死亡処理 <夢世界で一度でも死亡している場合、死の経験によりさらに1d10のSAN喪失となります>(ED.1,2であれば別途報酬は与えられます)。 さらに、ED.3、ED.4 による全滅の場合は以下のようになります。 ------------------------------------------------------- <次の瞬間、探索者たちはまた別の部屋で目を覚まします。少々の眠気は覚えているものの、SAN以外の耐久などはすべて元に戻っています。  しかし、帰還を喜ぶ暇はありません。すぐにむせ返るような血の匂いに気付くでしょう。  周囲を見れば、血の海の中にばらばらになった兎などの動物の頭部や四肢などが見受けられ、それが匂いの元だと悟らざるを得ません。  凄惨な光景に、探索者たちは1d3/1d6+1のSANを喪失します。  さらに、すぐに彼らの前には黒いフードを深く被った男が現れ、表情は伺えないものの、満足したような様子であることが分かります。  「我ガ主ハ満足サレタ」  そう呟くと、男は部屋を出ていきます。 生還はできるものの、報酬は得られません。 さらに、以下の不定狂気が強制的に与えられます。 ※20%のSANを失ったことによる不定を得ていた場合は、さらに以下の狂気が加えられることになる。 ED.4で頭をかち割られていた場合→動物恐怖症 ED.3で四肢をもがれていた場合→心因性の四肢不全 (期間は1d10×10日) ------------------------------------------------------- 8.裏話 Q.グールの目的は? 主であるニョグタに精神力(SAN)を与えることです。 そのため、SAN喪失の総計が足りないと「心ガタリナイ」となり、グール自らSANを奪おうと襲いかかってきます。 ニョグタ自身が姿を現すならば最早必要ないでしょうが。 Q.聞き耳で聞こえた呪文は? 懐中時計に書かれたニョグタ退散の呪文です。 白兎は懐中時計を持つことで人格を保っています。 そのため、取り戻したことで白兎の人格に戻り、そのお礼として探索者たちを助けてくれました。 Q.鳥を殺す前と殺した後でカメレオンの色が異なるのは? 最初に兎が襲いかかり、その返り血でカメレオンが赤い色に変わりました。 ちなみに、白兎に殺意はなく、赤兎には殺意しかなかったので、優柔不断には該当しません。 赤いカメレオンも同様に殺意しかありませんでした。 Q.火かき棒が赤くない状態でのエンドの場合、白兎でも襲ってくるのか? 白兎といえど所詮夢世界で生み出された存在です。 当然その時の白兎に自我などありません。 Q.なにが審判だったのか 審判ではなく神判。 ニョグタによる理不尽な神判を、白兎は審判だと思っていただけのことです。 9.敵能力値一覧 ★「大蜘蛛」緑の部屋に住まうもの STR:12   DEX:13   INT:12 CON:16  POW:3  SIZ:20 HP:18   MP:3   回避:26  db:1d4 ―――――――――――――――――――――――――― [武器]かぎ爪 70%:2回攻撃 ダメージ 1d6+db     毒針 30%:ダメージ 1d3+毒(幻覚による1d6のSAN喪失) いとをはく 80%:対象者にDEX-1(糸を焼ききるまで効果が続く) [装甲]なし [呪文]なし [正気度喪失]目撃した場合(1/1d6) ※火かき棒で攻撃されるか、耐久力をすべて失った場合、腹から中蜘蛛と1d10+6の子蜘蛛が現れる。これを目視した場合、0/1d4のSANを喪失する。 ★「中蜘蛛」子蜘蛛の司令塔 STR:12   DEX:11   INT:14 CON:13  POW:3  SIZ:12 HP:13   MP:3   回避:22  db:0 ―――――――――――――――――――――――――― [武器]毒液 60%:ダメージ 1d3+毒(しびれ)     子蜘蛛を呼び出す 100%:子蜘蛛の集団を呼び出す。 [装甲]粘液による3ポイント(火かき棒で取り払われる) [呪文]なし ※毒液の対象は1ターン行動不能となる。火かき棒を持つ探索者が優先的に狙われる。 ※『子蜘蛛を呼び出す』は3ターンごとに行われる。個体数は1d5+3であり、大蜘蛛から生まれた子蜘蛛とは別グループで行動する。 ※火かき棒で2回攻撃されるか、耐久をすべて失った場合、残った子蜘蛛は散り散りになって逃げ出し、戦闘終了となる。 ★「子蜘蛛」大蜘蛛の子供たち HP:1(1体につき。個体数がグループごとのHPとなる) [技能]集団で襲いかかる 80%:個体数/2のダメージ+1d3のSAN喪失 ※子蜘蛛は呼び出されたグループごとに動く。 ※通常の攻撃に対しては、ダメージ分の個体数が減少する。 ※火かき棒を振り回すなどで1グループ分が追い払われる。回避はしない。 ★「ニョグタ」ありえべかざる、理不尽な神判官 STR:85   DEX:20   INT:20 CON:40  POW:28  SIZ:80 HP:60   db:0 ―――――――――――――――――――――――――― [武器]触肢 100%:ダメージ 1d10 または 捕まえて<組付き> [装甲]各ラウンドにおいて受けるダメージのうちの最初の10ポイントは、どんな原因で受けたものであれ無視して取り合わない。耐久力がゼロに達すると、追い払われて去って行く。 [呪文]すべての<<招来>>および<<接触>>の呪文;<<門の創造>> [正気度喪失]1d6/1d20 ※呪文によって追い払われないかぎり、犠牲者をひっつかんで、地下への穴へとひきずっていく。触肢を打ち付けてきた場合、10m以内にいる対象は無数の小さな傷を付けられてそれぞれ1d10ポイントのダメージを受ける。 ★「食屍鬼(グール)」神判官のしもべ STR:12   DEX:16   INT:15 CON:11  POW:12  SIZ:16 HP:14   db:1d4 ―――――――――――――――――――――――――― [武器]鉤爪 30%:ダメージ 1d6+db 噛み付き 30%:ダメージ1d6+牙でいたぶる(1d4) [装甲]火器と飛び道具はロールで出た値の半分のダメージを与える(端数切り上げ) [呪文]なし [正気度喪失]1/1d8+1 ※夢から覚めた先でも終わらぬ悪夢にSANの減少値は多めになっている 9.